なぜ脱酸素処理(溶存酸素の脱気)が必要か?
水中(液中)に溶存酸素(DO: Dissolved Oxygen)があると、例えば食品であれば酸化による劣化が進行し、味や色、風味を損ねたり、雑菌が繁殖しやすくなり、結果として賞味期限を短く設定せざるを得なくなります。
また化学反応であれば、意図しない反応が起きる、反応が阻害される、装置や配管内が腐食する、爆発の危険がある、製品が劣化するなど、さまざまな悪影響が出ます。
液中のDOを除去する方法は大きく分けて化学的な手法と物理的な手法があります。
前者は亜硫酸ナトリウムやヒドラジンなどの還元剤を使います。亜硫酸ナトリウムは、ワインの酸化防止剤として有名です。
後者は真空引きしたり、加熱したり、膜を通したり、不活性ガス(窒素など)を吹き込んだりします。
このなかで、副生成物が一切できないため液質を変化させず、また取り扱いが容易で安全性が高く、かつ比較的安価で済む方法として、不活性ガス(窒素)を用いた窒素置換法による脱酸素処理(溶存酸素の脱気ともいう)が広く採用されています。
従来方式は、大量の窒素ガスを、長時間に渡ってバブリングする
ただのバブリングは、効率が非常に悪い
まず、窒素置換法による脱酸素処理の基本原理をご説明します。
右のイラストをご覧ください。
DO(溶存酸素)が含まれた液体のなかに、酸素をほとんど含まない高純度の窒素ガスを送り込みます。(❶)
これは液中に酸素濃度の勾配(酸素分圧の差)を作り出すためです。
勾配を滑り台、酸素を人に例えると、滑り台の角度が急になるほど、人は勢いよく下るのと同じイメージです。
酸素は濃度が高い方(液体)から低い方(窒素バブル)へと移ります。(❷)
こうして窒素+酸素の混合ガスとなり、液面から大気中に放出され、液中の酸素濃度が低下します。(❸❹)
しかし窒素ガスをただバブリングしてもバブルは大サイズに留まります。すると液相との接触面積が小さく、かつ気泡の上昇速度が速く接触時間がごく短いため、せっかく高濃度にした窒素ガスを送り込んでもほとんど酸素を伴わずに大気に抜け出ていってしまいます。
そのため、とりわけ目標とするDO濃度がごく低い場合には、大量の窒素ガスを何時間もバブリングする必要がありました。なかには24時間もバブリングに費やしている現場もあります。
この脱酸素工程で手間取ることによって、製造ラインのリードタイムが非常に長くなり、生産量を増やせず困っている現場がとても多いのです。
窒素置換法による脱酸素のメカニズム
- ❶ ボンベ等を用いて高純度の窒素ガス(N₂)を液中に送り込む
- ❷ 酸素濃度の勾配が生まれ、酸素濃度が濃い方(液相)から薄い方(窒素バブル)へと酸素が移動する
- ❸ 窒素と酸素の混合ガスとなる
- ❹ 液面から大気に放出され、溶存酸素濃度が低下する
OHR式は、高効率で脱酸素処理できます!
OHR式では、この問題がいとも簡単に解決できます。
まずバブリング方式との比較の動画をご覧ください。
この動画ではタンクに溜めた720Lの水道水を対象に、脱酸素効率を比較しています。
OHR方式は窒素ガス使用量を70.9%、処理時間を56.3%、それぞれ削減できました。
より大型のモデルを使えば、処理時間はもっと短縮できます。
次に、以下のグラフをご覧ください。
例えばDOが10.0mg/Lあって、これを2.0mg/Lまで脱酸素する(=酸素除去率80%)場合には、OHRミキサーをワンパスさせるだけで済みます。OHRミキサーの内部を流体が通過する時間は、わずか0.04秒です。この短時間で、脱酸素効率80%が達成できます。
さらに、OHRミキサーを約2回通せば、DOは0.00mg/Lまで下がります。
※これは720Lの水道水を溜めたタンクでバッチ処理をおこなったデータです。
毎分200Lの水を供給できるポンプで、OHRミキサーMX-E25型に通しました。
720Lの全量がOHRミキサーを1回通過するのに単純計算で3.6分かかりますが、その時点のDO除去率は77.3%でした。
そして2回通すと0.00mg/Lになりました。
※タンクを介さず、完全なワンパス処理(水道水をポンプ吸込側に直接供給)をおこなった別テストでも、9.9mg/LのDOが1.9mg/Lまで下がり、DO除去率80.7%を達成しました。
ある化学工場では、OHR方式の導入によって窒素ガス使用量が79%減り、処理時間は61%減りました。
窒素ガスのコストが年間192万円もカットされ、生産効率も大改善されました。
難しい操作や薬剤の添加などは一切必要ありません。
OHRミキサーとポンプと窒素ガスのみで、スピーディーに脱酸素できます。
より詳しくは説明資料を差し上げますので、お問い合わせください。
連続式で、DO値:10.0mg/L→0.2mg/Lにすることも可能です
バッチ処理ではなく、連続式で10.0mg/LのDOを0.2mg/L程度まで下げることも可能です。
つまり貯留タンクの中で循環処理するのではなく、送液されてきたものを連続的に脱酸素して次工程に送り出すことも可能です。
詳しくはお問い合わせください。
なぜOHR式は、高効率脱酸素を達成できるのか
特殊反応器で水も窒素ガスも微細に砕き、繰り返し衝突させる
キーポイントは、特殊反応器 OHRミキサーです。
高圧乳化機が使う圧力のたった1%で同等の微細化能力を示すほど、信じがたいミキシング力を有しています。
その力を用いて、窒素ガスの方だけではなく、溶存酸素が含まれた液体の方までも微細に砕き、相互に激しく衝突させ、濃密に接触させます。
内部を通過するたった0.04秒の間に、です。
これにより溶存酸素が窒素バブル中に移動する効率が飛躍的に高まり、脱酸素処理が瞬時に完了します。
OHRミキサーには可動部がなく、2種類の特殊構造体が固定されているだけのシンプルな構造です。図解をご覧ください。
窒素バブルも、酸素を含む液体も、両方とも微細に砕いて、互いにぶつけ合う。
濃密な接触が起きて、瞬時に酸素が移動する。
これが、OHR方式が高効率である理由です。










